REPORT 2026.09.02

もう一度、夏を。JAPAN SUMMER LEAGUE 2026 取材レポート

甲子園に届かなかった36人、沖縄でもう一度野球と向き合う

2026年8月17日~21日の5日間、日本全国から36人の高校球児が沖縄に集まって白球を追いかけた。場所は沖縄市にあるコザしんきんスタジアム。那覇空港から車でおよそ40分北上した場所にあり、2026年2月に広島東洋カープが春季キャンプを行った場所である。集まった高校生たちはそれぞれ違う高校で、それぞれ違う夏を過ごしてきた選手たち。共通するのはこの夏に甲子園出場を果たした選手はひとりもいないという悔しい事実。甲子園まであと一歩だった選手もいる。思うように試合に出られなかった選手もいる。高校最後の大会で悔しい敗戦を味わった選手。そして、この夏を最後に野球そのものを終えようとしている選手もいた。そんな36人が沖縄の地でプレーしていた姿を追うためにSPORTISTは「JAPAN SUMMER LEAGUE 2026」の会場を訪れた。

JAPAN SUMMER LEAGUEは甲子園出場を逃した高校3年生を中心に「陽の目を見ない場所に光を」という理念のもと、誰でも参加できるプラットフォームとしてスタートした。スキルアップ、新たな仲間との出会い、自分の将来についても考えられるリーグとして2025年から開催されている。SPORTISTはJAPAN SUMMER LEAGUEを主催している株式会社ジャパンリーグ取締役副社長COOの河越氏に話を聞いた。

野球を続けるにしても、辞めるにしても、自分自身が納得して次へ進むために

河越氏は語る。
「高校時代、私は高校で4番を打ち、レギュラーとして試合にも出場していました。しかし、大学野球に進むと状況は一変しました。1年生から4年生までの部員総数は約200人。その中に埋もれてしまいました。4年間野球をやった記憶というのがほとんどないくらい試合に出られなかったんです。その後、アメリカで開催されているカリフォルニアウィンターリーグに参加して、1カ月間、ひたすら野球をやりました。プロになることは出来ませんでしたし、大学在学時に満足いくような活動ができたわけではありませんでしたが、そこで初めて、試合の楽しさ、野球の楽しさを思い出すことができました。その経験によって、私は野球を辞めることができました。本気で自分と野球に向き合い、とにかく1カ月間本気で取り組んだからこそ納得して次の人生へ進むこともできました。だからこそ今回参加してくれた36人の選手たちにも「全力を出し切り、次のステップに進むための場所」をつくりたかったんです。」


チャンプルー(混ざる)文化を通して、人としても成長できるように

さらに河越氏は話を続けてくれた。沖縄の言葉を使って。
「今回集まった選手たちは、1人1人違う場所で高校野球を経験してきています。背景ももちろん違います。甲子園に出場経験のある有名私立高校の選手もいますし、沖縄県内外のいわゆる公立高校から来た選手もいます。中にはプロのスカウトや社会人野球、大学野球界から注目をされている選手もいますが、参加している選手はこれまでにメディアなどに注目をされるような経験がない選手がほとんどです。そんなバックグラウンドが異なる36人がここで1週間、一緒に野球をして、一緒に食事をし、一緒に生活を共にします。沖縄の言葉でいうとまさに「チャンプルー」文化なんです。「チャンプルー」とは混ぜるという意味ですね。さらに、ここでの試合は「勝つ」ということだけが目的ではありません。期間中に行われる試合は、ヘッドコーディネーターが試合に出場する選手のオーダーを決めていますが、最終日の試合だけは、選手たち自身で話し合って、試合のオーダーを決めます。あるチームは「勝つために4番にする」という考えもあれば、「自分が試合経験を積みたいから4番に立つ」という考えもある。さらに、「彼が4番に立ったほうがチームが盛り上がる」という考えもあります。正解は一つじゃないんです。選手同士で話し合い、目的を共有し、自分たちで決めます。これは単なる野球の戦術ではなく、「自分たちで考えて、決める」経験をしてほしいと思っています。限られた期間になりますが、日本全国から沖縄に集まり、生活を共にし、グランドで真剣に野球に向き合い、その経験を共にする仲間は、これから先の人生において一生の財産になると信じています。」


全力を出すことで納得が生まれ、次のステップへの原動力に

沖縄で過ごした5日間。36人の高校生は、それぞれ違うものを持って、この場所にやってきた。悔しさを抱えてきた選手。もっと野球がしたくてやってきた選手。次のステージを見据えてやってきた選手。そして、もしかすると、野球を終えるためにやってきた選手もいたかもしれない。そんな彼らが最後に得たものは「経験」というひとつの言葉だけでは語り尽くせない。技術、勝敗だけでもない。

「やりきった」という納得感。その想いの背景には、今回集まった仲間たちとの時間、そしてこれまで自分を支えてくれた人への感謝の想いがあるはずだ。

悔しいが甲子園には届かなかった。それでも彼らの夏は終わらなかった。沖縄で出会った仲間と野球をし、笑い、悩み、考えた5日間。その時間は、これから始まる人生のどこかで、きっと彼らを支えてくれる。悔しい結果は変えられなかった。でも、「もう一度夏を、もっと野球を」その想いで過ごした5日間はきっと彼らの将来を変えるに違いない。

 

【株式会社ジャパンリーグ 取締役副社長COO 河越氏 プロフィール】



河越 春樹(Haruki Kawagoshi)

株式会社ジャパンリーグ 取締役副社長 COO

【略歴】
2009年 慶應義塾志木高等学校 入学
2012年 慶應義塾大学商学部商学科 入学(体育会硬式野球部入部)
2016年 カリフォルニアウィンターリーグ 参加
2016年 東京建物株式会社 入社
2025年 株式会社ジャパンリーグ 入社 取締役副社長COOに就任