SPORTIST STORY
B.LEAGUE BASKETBALL PLAYER
キング開
Kai King
STORY

もっと上手くなりたいって思える原動力

現在、B. LEAGUE 横浜ビー・コルセアーズで活躍するキング開選手。2019年に地元・横浜のチームである横浜ビー・コルセアーズに初のユースチーム出身選手として加入した彼へ、チームの先輩でもある小原翼がインタビュー。これまでの人生、趣味、家族とのエピソードからキング開選手にとって、「応援とは何か」を聞くために、試合前日の練習場を訪れた。

Interview / 小原 翼(おばら つばさ)
神奈川県出身。プロバスケットボールリーグBリーグで5シーズンプレーし、2021年に地元横浜ビー・コルセアーズで現役を引退。その後、日本財団に入会し、スポーツを通じて社会貢献活動の輪を醸成する「HEROs」プロジェクトに参画する。

Text / Remi Matsunaga 
Photo / Naoto  Shimada



初めてのコーチは、米軍基地でバスケを教える父

小原翼:まずはバスケとの出会いから聞いていこうかな。

キング開:出会いは本当に小さい時。もともと両親がふたりともバスケをやってたから、父とNBAをテレビで見たり、子供用のバスケットボールで遊んだりと、小さな頃から自然とバスケに触れている環境でしたね。競技として本格的に始めたのは、小学校2年生かな。当時通っていた小学校のミニバスが最初です。ミニバスを始めるまでいろんなスポーツも体験したんだけど、本格的にやりたいなと思ったのはやっぱりバスケだった。

小原翼:子供の頃はバスケ以外のスポーツもやってたの?

キング開:バスケはもちろん、アメフト、野球に似たティーベースみたいなやつ、あと空手も少しやってました。父は軍関連の仕事ではないんですけど、おそらく友人からの繋がりで、米軍基地でバスケのコーチングをやっていたんですよね。

小原翼:それで開も基地に出入りしてたんだ。

キング開:当時住んでいた家の近くにあったベースにはしょっちゅう行ってましたね。

小原翼:小学校で本格的にバスケを始めてから、中高とずっと続けてたんだよね

キング開:そうですね。中学でも続けたのち、高校はアレセイア湘南高等学校へ進学しました。神奈川県内のいろんな高校から声を掛けて貰ったんですけど、アレセイアは留学生もいるってところが自分の中で結構大きかったんですよね。大学へ進めば外国からの留学生とプレーするのも当たり前になるので、それなら早いうちから経験しておきたいなという思いで、アレセイアを選びました。

小原翼:ビーコルユースにはいつ入ったんだっけ。

キング開:ユースに入ったのはU15、中学校3年生の時。中3から1年やって、高校では部活に入ったのでユースには入らず、高校バスケを引退してから大学に入るまでの間、またU18のユースに入ってました。

小原翼:ビーコルユース出身としては、初のトップチーム選手なんだよね。去年一緒にプレーしていた時から開のビーコルに対する思いはめちゃくちゃ感じてたんだけど、それってやっぱりユースの時に芽生えたものなの?

キング開:ビーコルは地元チームということもあって、それこそユースに入るよりもずっと前から親近感を感じていたチームなんですよ。bjリーグ優勝の時もテレビで観ていたし、ビーコルに対しては「自分たちに近い存在」みたいな気持ちがずっとあるんですよね。だから今、そのチームにバスケをプレーする側として関われていることが本当に嬉しい。

小原翼:「いつかビーコルの選手になるんだ」みたいな思いは、小さい頃からあったの?

キング開:どちらかと言うと、まずプロになりたいという気持ちがあって、そのうえで地元でプロとしてやれればそれ以上は無いなと思っていた感じ。だから実際にビーコルでプロとしてのスタートを切れたのは、自分のキャリアとしては最高のスタートを切れたかなって思ってます。ビーコルユース出身という立場としても、ユースからトップチームにいける選手が今後もっと増えればと思っているから、自分がそのルートの先駆者になれたってことも嬉しいですね。

 

地元横浜で叶えたプロの夢

小原翼:開って地元への愛がすごいよね。

キング開:小、中学生の頃からずっとここで過ごしてきて、良い思い出も悪い思い出も全部がある土地ですからね。

小原翼:地元を歩いてて声をかけられたりすることもある?

キング開:うん、街にポスターとかも貼ってあるから、それなりに認知して貰えてるのかな。ありがたいです。

小原翼:初めて自分が写ったポスターが貼られているのを見た時って、どんな気持ちだった?

キング開:素直に嬉しかったです。僕が選手として載っているポスターを見て試合を観に来てくれる人も、きっと少なからずいますよね。

小原翼:昨シーズン初めて特別指定選手としてビーコルでプレーして、その後一旦シーズンを終えたあと、また今シーズンも選手としてビーコルに戻ってきたわけじゃん。多分いろんな選択肢があったと思うんだけど、今シーズンもビーコルを選んだ理由や意味ってあったりしたのかな。

キング開:選んだ理由のひとつは、横浜に家族がいること。プロとはいえ最初は何もわからない状態からのスタートなので、大変な時期に家族が近くにいてくれたことは大きな安心に繋がりましたし、本当に感謝しています。あと、やっぱり試合も観にきてほしいですからね。地元に近い方が観に来られるチャンスも増えるし、実際、家族からも「横浜を選んでくれてありがとう」って言われました。

小原翼:今シーズンのチームを決定する時って、家族ともかなり相談したの?

キング開:それはもちろん。ありがたいことにいろんなチームから声がかかったので、本当に悩みました。家族以外では、(河村)勇輝ともいろいろ話しましたね。昨シーズン中は勇輝と一緒に試合へ出る機会が多くなかったので「もっと一緒にやってみたい」って思いがあったし、それと同時に「自分がどういった面でのプラスをビーコルに持ってこられるかな」って気持ちもありました。結果的に良い選択ができたと思っています。

 

あの時の自分に勝てたことが、今に繋がっている

小原翼:開って、僕の中ですごく真っ直ぐなイメージなんだよね。そういう性格や気質はどこから出てきたものなのかな。

キング開:小さい頃から負けず嫌いなんですよね。父とゲームしても負けたら泣いてましたし、弟も負けず嫌いだからいつも競い合って育ってきました。「勝ちたい」って気持ちは、そういうところから出てきているように思います。あとはやっぱり父ですね。父とのシュート対決は小さい頃からやってたんですけど、親なのに自分が勝ったらめちゃくちゃ煽ってくるんですよ(笑)!

一同:(笑)

キング開:腹もたつし、「絶対負けたくねぇ」って気持ちになりますよね。多分そういう気持ちを芽生えさせるために煽ってたんだって今なら解るんですけど(笑)。でも勝ちに対する貪欲な思いの原体験ってそういう経験にある気がしています。父親からの影響はやっぱり大きいですね。

小原翼:勝ちへの熱い思いはそういうところから育ってたんだね。

小原翼:でもさ、それだけ強い思いを持ってプレーしているからこそ、精神的にきつくなる時もあるんじゃない?

キング開:試合に負けて悔しいとかは結構あるけど、直近で物凄くメンタルをやられそうになったのは、昨シーズン特別指定選手として入っていた時期ですね。大学ではずっと試合に出続けていられたけど、プロの世界に入ってあんまり試合に出られなくなったのは辛かった。同世代の選手達が特指として試合に出ている中、自分が出られていない状況も悔しかったし……。それこそ「このままプロを目指すか目指さないか」を考えるくらい、メンタル的に苦しい時期でした。

でも今までやってきた事をここで諦めるのは嫌だったし、やっぱりプロになりたいと思う以上、こういう局面はキャリアのどこかで多分必ず来ることだと思っていたので、ここで努力を続けることが大事なんだなって思ったんですよね。だから遠征に行けない時は横浜で練習していましたし、オフの日でも体育館で練習して。悔しさをバネにしてポジティブな気持ちに切り替えた結果が今に繋がっていると思うし、現在の環境に辿り着けたのは、あの時自分自身に気持ちで勝てたからだと思っています。あと、当時はシューティングの練習の時にも父がリバウンドに付いてくれていたんですよ。そういった面でも、やっぱり家族のサポートはありがたかったです。

小原翼:辛い状況に身を置いた時、メンタルを保てなくなってしまう人と、開みたいに乗り越えられる人に分かれると思うんだけど、開は自分が乗り越えられた理由って何だったと思う?

キング開:やっぱり叶えたい夢が自分の中にあるから。日本代表にもなりたいし、海外でもプレーしたい。そういう夢を持っているからこそ、「いちばん辛い時期に辞めたら絶対に後悔する」って思ったんですよね。人生は一度しかないのに後悔したくないんで、そこはもう割りきって頑張ろうって思ったし、今頑張ることが将来に繋がると信じていました。

 

エゴサから感じる自分の課題と、目指したい選手像

小原翼:開、平塚で負けた試合の後にめちゃくちゃエゴサしてたのって覚えてる? 結構厳しい負け方をした日だったから僕は「こんな試合の後によくエゴサするな」って思ったんだけど、その時「いや、これがすごい力になるんですよ」って話してたのがすごく印象に残ってるんだよね。

キング開:あの平塚の試合の日って、僕がビーコルで初めて試合に出た日だったんです。たしかに残り何十秒かでワンプレーって状況の中、あまり良い出方ではなかったし、それがデビューっていうのはちょっと苦い思い出でもあるんですけど、それでもファンの方々は楽しみにしてくれていたわけで。コートに出る時はすごい拍手で送り出してくれたし、その場面を見た両親にとってもすごく嬉しい瞬間だったと思うんですよね。だから、その時のみんながどういう思いだったのか気になって。

検索してみたら「これからも頑張って欲しい」「これから期待したい選手」って言葉ばかりで、そういう言葉を目にすると、これからもっと頑張って、もっと努力を続けて、こうやって応援してくれている人たちに「応援してきて良かった」って思って貰える選手になりたいなと思いました。その時はある意味、自分のモチベーションを高めるためのエゴサだったんですけど、実際にたくさんの言葉を見ると「もっと頑張ろう」って気持ちになりましたね。

小原翼:今もエゴサしたりするの?

キング開:前ほどじゃないですけど、たまに、ちょっとしちゃいますね(笑)。「みんなどう思ってるんだろう」って気になります。たまにアドバイスというか……、例えば「ビーコル」って調べたら「リバウンド取れてない時あるよね」みたいな意見を目にすることもあるじゃないですか。そういう意見を見て、「自分はリバウンドを取りに行ける能力があるから、じゃあどんどん行っちゃおうかな」って考えたり。

小原翼:どんな意見でも、ちゃんと客観視してるんだね。

キング開:もちろんネガティブな意見を目にすることもありますけど、でもそれもその人が思ったことだからひとつの意見として見るし、そういう意見をどうすれば良い声に変えられるんだろうってところが、これから自分がチャレンジすべきことになるのかなと。

小原翼:ここまで話を聞いていて、「ファンに自分がどう見られているか」を常に意識しているところがすごいなって改めて思った。現役でプレーしている選手の中でも、ファンを意識できる人もいれば、自分のプレーだけを見ている人もいるよね。

キング開:僕は単純に見ていて楽しいと思って貰えるバスケがしたいし、あとはコロナ禍で一度無観客を経験したこともファンを意識する理由のひとつとしてあるのかもしれない。去年のリーグ戦で再び有観客になった時、やっぱり無観客でやる試合とお客さんが入った状態でやる試合は全然違うなって感じたんです。

 

身震いするほどの声援と景色

キング開:ファンの応援って、本当にすごい原動力になるんです。インカレ4年最後の東海戦、前半だけで20点近くの差がついた状況の中、後半で追い上げて結構追いつけたあとのタイムアウトでベンチに戻った時もそうでした。

あの時自分がどんな思いでやったのかはあんまり覚えてないんですけど、僕、選手全員で「行くぞ!」ってやったあと、後ろの観客席にも「みんなで!みんなで!!」ってなんかやってて。その時会場全体が「ワー!!!!!!」ってものすごく盛り上がったんですよね。煽った僕自身も鳥肌が立つような景色だったし、同時にバスケでこれだけの人を湧かせられるってすごいことだなって思った出来事でした。「試合を見にきて良かった」って思う人が少しでも増えたらいいなって思いは、バスケをやっていて常に持っているんです。

それは5人制だけじゃなく、3X3でも同じ。3X3の場合はスペースがたくさんあるから普段人がやらないような身体能力を活かした動きで魅せやすいし、それを観て盛り上がってくれると自分もやっていて楽しい。ファンを意識するのは、僕にとっての原動力だからです。

小原翼:さっき「見ていて楽しいプレー」がしたいって言ってたけど、それって具体的に言うとどんなこと?

キング開:例えばパスならビハインドパスやノールックパスみたいな、ちょっとひと手間加えたプレー。自分の得意なことで言えば、ダブルクラッチやジャンプ力を使った、高さを生かしたプレーかな。他の人があまりできないことを見せたいですね。

僕はNBAでデリック・ローズ選手がいちばん好きなんですけど、彼はすごくジャンプ力があるうえに爆発力もあって、ガードなのにダンクとかもやっちゃうような選手なんです。僕がバスケにハマったきっかけもそういうプレーを観たことだったから、今度は自分が観ている人に「すごい!」って思わせたい。

大学3、4年くらいで「魅せるバスケ」が自分の中で出来てきた感じがあって、今はプロのレベルにやっと慣れてきたって感じなんでそんなに調子乗ったことはできないですけど(笑)。 でもこれからはどんどんそういうプレーも取り入れていきたいですね。

小原翼:ちなみに開は試合中、ファンの声援って聞こえてる?

キング開:プレーしてる時はさすがに入ってこないんですけど、ボールが止まった時とかシュートが入った時は結構聞こえてきますよ。それこそさっき話したインカレの時は本当にすごかった。今までの人生でいちばんってくらいの盛り上がりでしたね。

小原翼:インカレの会場だった代々木第二体育館は雰囲気も良いんだよね。会場が丸くて、客席が全部コートを中心に捉えている感じ。例えば国際プールだと端の席に座っている人は体の向きを変えないとコートが見えないんだけど、代々木第二の場合はそのままの姿勢でいれば自然と全員がコートに向かう形になってるんだよね。

キング開:客席に囲まれる感じで良いですよね。本当に観客と一体になる感じ。さっき話した東海大との試合での出来事は、僕自身も「こんなことが起こるんだ」って驚くほどの経験でした。月並みな言い方ですけど、エネルギーとパワーが湧いてきましたね。ちょうどチームも追い上げムードでしたし、きっとあの時見ていた人たちも「頑張れ!」って気持ちになってくれていたと思う。

多分あの試合、みんな普通に東海大が勝つんだろうなって思っていたと思うんですよ。でも僕達も結構頑張って、良い試合を繰り広げられた。自分達にとってすごく良い試合だったし、きっと観てくれた人たちも同じように感じて貰えたんじゃないかなと思っています。

チームでの意外な交友関係

小原翼:家で自炊とかしてる?

キング開:実家なのもあって、今はそんなにしてないですね。来シーズンからはひとり暮らしも考えているんで、自炊の面でもどうにかしなくちゃいけないなとは思ってるんですけど。

小原翼:横浜で行きつけのお店とかある?

キング開:あんまり外食する方じゃないからなぁ……。大学行ってた時の方がまだ外食してたかも。大学の近くに二郎系のラーメン屋さんがあったんですけど、そこは美味しかったから結構行ってましたね。あとは『ブロンコ』ってハンバーグ屋さん。そのふたつには、4年間でかなりお世話になりました。

小原翼:それだけ通ってたなら店員さんとも仲良くなったりするんじゃない?

キング開:……って思うじゃないですか? でもラーメン屋さんとかちょっとピリッとした雰囲気だから、行くは行くんですけど店員さんと喋ったことは「麺マシマシ」くらいしかないです(笑)。

一同:(笑)

小原翼:大学時代に通った店の味って、たまに無性に食べたくなるよね〜。

キング開:そう! 食べたくなって、1ヶ月前くらいにブロンコ行っちゃいました。美味しかったです。

小原翼:今、チームの選手やスタッフでは誰と仲が良いの?

キング開:オフでも一緒に遊んだりするのは、(河村)勇輝か、あとシュウさん(生原秀将)。シュウさんって意外かもしれないですけど、実は結構お世話になってるんですよ。この間もケントさん(山沢健人通訳)と3人で渋谷へ買い物に行きました。

小原翼:え〜、普段シュウと何して遊ぶの???

キング開:買い物や温泉に行ったり、シュウさんの車でちょっとドライブしたり。そんなにしょっちゅう遊んでるわけじゃないですけどね。

小原翼:いや、大学同期の僕ですらシュウと遊ぶのは3ヶ月に1回くらいですよ(笑)? だから「一緒に遊んでる」って時点でそこそこ会ってるってことですよ。

小原翼:バスケの話とかする? 普段何話してるの?

キング開:バスケの話はそんなにしないですね。話すのはハマってることとか、世間話とか、時事問題とか、もう普通〜の会話ですよ(笑)。

 

応援する選手の存在に、自分自身も助けられてきた

小原翼:開にとって、「この人の存在があったから」みたいな存在って誰?

キング開:やっぱり自分がバスケを始めたきっかけのデリック・ローズ選手ですね。彼は膝や前十字靭帯などの大きな怪我を何回か繰り返しているんです。僕としてもいちばん応援している選手だから怪我を知った時はすごく悲しかったけど、でも彼はそんな大怪我から何度も復活して、今も現役でプレーし続けている。そういう姿を見ると、どんな壁があっても這い上がる強いマインドを持つことはすごく大事だなって思わされるし、自分もローズみたいにどんなに大きな壁でも頑張って立ち向かおうって気持ちになります。さっき自分を応援してくれるファンの存在が原動力になるって話をしたと思うんですけど、同時に自分が応援する選手の存在に助けられている部分もありますね。

そういえば、僕が中学生の時デリック・ローズ選手が来日して、父と僕と弟の3人でイベントに行ったんです。自分のいちばん好きな選手を生で見られることだけでもすごく嬉しかったんですけど、会場で最前列に行けて、デリック・ローズ選手が客席にタッチする時に僕もタッチして貰ったんですよね。あれは一生の思い出です! 本当に夢のような時間だったし、こういう感情を与えられる選手に自分もなりたいなって思いました。

小原翼:今ユースにいる選手からすれば、開もそんな存在なんじゃない。

キング開:そう思ってくれたら嬉しいですけどね(笑)。 バスケをしてる以上、こういう選手になりたいなって思って貰えるようになりたいし、プレーだけじゃなく人間的な部分でも良いお手本になりたいです。

小原翼:もし今バスケをやってなかったら、何をやっていたと思う?

キング開:バスケをやってなかったら、多分父と同じで歌を仕事にしていたんじゃないかな。実は小学生の時に、バスケを取るか歌を取るかってタイミングがあったんですよ。「日本で次のジャスティンビーバーを生み出そう」みたいなプロジェクトでレコード会社と契約の話があって実際にレコーディングもしたんですけど、「やっぱりバスケのプロになりたい」って、帰りの車で父に伝えたんです。父は「わかった、開が選んだ道ならサポートする。でも、選んだからにはやっぱり努力は必要だよ」って話をしてくれました。それまでは父と歌のショーに出たりもしていたんですけど、そこからバスケ1本にシフトチェンジしました。

小原翼:今でも歌ができる環境があれば、やっても良いなって気持ちはある?

キング開:そうですね、自信はあります。

小原翼:シーンが拡大して規模が大きくなってくにつれ、今後「元プロ」と呼ばれる人の数もどんどん増えていくわけじゃないですか。だからこそ、プレーはもちろんだけど、それ以外の部分での差別化も重要なんじゃないかなと僕は思っていて。今は「どっちかを選ばなきゃいけない」って時代でも無いと思うんですよね。

観客を楽しませるって視点で言うと、例えば松島良豪選手がレバンガ北海道でやっていた松島劇場とかもそう。松島選手って試合前やハーフタイムでダンスとか劇を全力でやって、でも試合にはスタメンで出場するんですよ。自分でお客さんを盛り上げてから試合する選手って滅多にいないし希少だけど、めちゃくちゃ価値があることだと思うから、個人的には開にもどんどん多方面での挑戦をしていってほしいなって思います。

キング開:実は去年エンゲート(https://engate.jp/communities/b-corsairs/)のイベントで、リワードとして僕の歌を動画でプレゼントするって企画をやったんですよ。『いとしのエリー』を歌ったのかな。

小原翼:じゃあ今後も、そういった方面での活躍も期待できそうだね。

小原翼:チーム運営っていろんな人で成り立ってるじゃん? 「チームメイト」って選手だけじゃなく本当に多岐にわたるって僕は思うんだけど、その人たちから得られているものって何だと思う?

キング開:プロの世界だけじゃなく、高校でも大学でもそういう人達がいるからバスケができるんですよね。バスケは1人じゃ絶対にできないです。特に大学時代は自分がキャプテンをやっていたこともあって、「裏方として頑張ってくれている人たちの支えがあってチームが成り立っている」っていつも実感していました。

自分たちが勝てるように、夜遅くまで一生懸命相手のスカウティングや分析をしたり、いろいろ準備してくれたりする人がいる。それがあるとないでは全然違いますし、やっぱりチームのために動いてくれている人達の気持ちも背負って自分達はコートで戦っているので、その人達の分まで勝ちたいって気持ちはいつも持っています。

それは今僕が所属している横浜ビー・コルセアーズでも同じ。ビーコルに関わっている全員がビーコルの一員だと思っているし、それを代表してコートに立っているわけなので、全員の気持ちを背負って戦っています。

小原翼:最後に、開が考える「応援」を言葉で表すと?

キング開:することもあるし、されることもあるもの。

自分の中でのモチベーションに繋がるもの。「もっと上手くなりたい」って思える原動力ですかね。

応援されると頑張ろうと思えるし、もっと応援されたいって気持ちにもなる。自分が小さい頃応援していた選手に元気を貰ってきたように、今度は自分が同じように元気を与える立場になりたいです。