SPORTIST STORY
BASEBALL PLAYER
磯村嘉孝
YOSHITAKA ISOMURA
STORY

応援、それは生きる上でいちばん必要なもの

アスリートが自身のキャリアを維持するというのは、簡単なことでは無い。ましてやそれが多くの猛者が鎬を削るプロ野球界においてのことであれば、脇目も振らず野球だけに必死で取り組まなくてはその立ち位置を保ち続けることは難しい。しかしそんな環境でも、困難な状況に置かれている人たちのために活動している現役選手がいる。磯村嘉孝、2010年の広島東洋カープ入団から今年で13年目。長きにわたってプロ生活を続ける傍ら、彼は病院や介護施設への訪問、試合への招待など、数多くの「野球外活動」を行っている。「応援は生きていく中でいちばん必要なもの」と語る彼のモチベーションは、一体どこから湧き出ているのだろうか。

Interview / SPORTIST
Text / Remi Matsunaga 
Photo / Naoto Shimada
Interview date / 2023.05.17 



「こんなに応援してくれている方達がいるんだ」と体感した野球外活動



ーー幼少期の磯村さんは、どんなタイプの子供でしたか?

遊ぶ場所はいつも外でした。友達とかけっこやドッジボールをしたり、川に行ったり、山で遊んだりもしていましたね。

ーーテレビゲームなど家の中で遊ぶよりも、外で遊ぶことが多かったんですね。

子供の頃からゲームは全然やらなかったですね。興味が湧かないことに対してはとことん興味がないタイプなんです(笑)。昔から自分が「これだ!」と思わないと動かないところがあるので、周りがゲームをやっていてもそんなにやりたいと思わなかったです。

ーー野球を始めたのはお父様がきっかけですか?

父の影響と、あと兄が少年野球に入っていたので、その流れで僕も小学校2年生の夏に少年野球団に入りました。始めたきっかけまでは詳しくは覚えていませんが、多分野球をやらなくちゃいけないような環境だったんだと思います(笑)。

ーー親族に野球経験者が多数いらっしゃる野球一族のご出身なんですよね。

そうなんです。でも「やらなくちゃいけない環境」とは言いましたが、野球自体はまったく苦じゃなかったんですよ。父とキャッチボールをしたり壁あてをしたりと、むしろ楽しんでやっていました。

ーー家族とともに野球を楽しみつつ育ってこられたんですね。そういった環境であれば、学生時代などは家族からの応援を感じる機会も多かったのでは?

高校は家から少し離れたところにあったのですが寮に入らず家から通学する形を選んだので、母は毎日とても早い時間に起きて弁当を作ってくれました。父も最寄り駅と家の間を毎朝毎晩送迎してくれて、本当にありがたかったです。高校時代は家族のサポートがないと過ごせなかったですね。今でも感謝しています。

ーー野球以外のスポーツをやってみたいと思ったことはありませんでしたか?

僕が小学校を卒業した頃にちょうどサッカーの日韓ワールドカップが開催されていて、その影響で「サッカーをやりたい」と思ったことはありました。僕の出身地は愛知県豊田市で名古屋グランパスエイトの本拠地・豊田スタジアムがある土地なんです。だからサッカーを目にする機会も多くて、なかでも当時グランパスエイトでゴールキーパーを務めていた楢崎正剛さんが大好きでした。僕は当時からキャッチャーをやっていたのですが、サッカーを観た時にゴールキーパーが自分のポジションと近いように感じたのもサッカーに惹かれた理由のひとつでしたね。当時親に「サッカーをやってみたい」と伝えてはみましたが、「このまま野球をやりなさい」と言われて結局やれず、野球を続けることになったんです。当時はすごく残念に思っていましたが、今思うと、あの時僕を野球に留めてくれたからこそ今があるので、これについても親にはすごく感謝しなくちゃいけないなと思っています(笑)。



ーーご家族といえば、磯村さんには弟さんもいらっしゃるんですよね。

兄と僕と弟の3兄弟です。弟は幼い頃から病気を抱えているのですが、両親は弟だけに特別力を注ぐようなこともなく、全員に対して平等に接してくれました。両親ともにスポーツ経験者なこともあってスポーツをやっている兄と僕へのサポートも惜しまなかったし、弟もスポーツが好きで、両親と一緒に広島まで来てくれたこともあります。僕も子供の頃から弟がすごく可愛かったので、仮に両親が弟のサポートに全力を注いだとしても、きっとそれにプラスして僕ができることがあるならやってあげたいと思っていたと思います。

ーー誰かを特別扱いするのではなく、それぞれがお互いをフラットな気持ちでサポートできる家庭だったのですね。

両親がそういうスタイルだったから、僕も自然にそうなったのかもしれません。

ーー磯村さんが病院や介護施設を訪問されるようになったきっかけは?

ちょうど一昨年くらいかな、日本財団さんとパーソルキャリアさんがコラボして行っている、HEROs ACADEMIAというプログラムに参加したんです。これはアスリートが仲間とともにスポーツの力を発揮する現場を通じてアスリートの力を社会貢献などの多様な形で社会に広めていこうという取り組みです。このプログラムをきっかけに「もっと発信したり行動したい」と思うようになって、病院や施設の訪問、病と戦っている方を球場に招待して試合を観ていただいたりといった活動を行うようになりました。もともと広島カープに在籍していた知人がパーソルキャリアさんに転職されたことをきっかけにHEROs ACADEMIAを知ったので、僕自身も最初からすごく積極的だったわけではなくて。最初は「どんな感じなんだろう、ちょっと行ってみようかな」くらいの気持ちでスタートしたのですが、結果的にはあの時参加を決めて本当に良かったと思っています。

ーーちなみに、これまで具体的にはどのような活動を行ってきたのでしょうか。

活動を初めてまだ2年目と日が浅いのでそこまで実績があるわけでは無いのですが、これまでにオンラインでの交流会を2回と、病院と介護施設への訪問、それと2年連続で試合への招待を行っています。本当は最初から直接訪問したかったのですが、活動を始めた当初はまだコロナが蔓延している状況だったので現地に伺うことが難しくて。「それならせめて今できることを」と考えて、初回活動はオンラインで行うことにしました。

ーー企画内容などもご自身で考えているんですね。実際に自身が考えた企画を実現してみて、いかがでしたか。

オンライン交流会については、直接会いに行けないけど少しでも入院患者さんたちに喜んでいただければという気持ちで企画を考えたんです。僕はプロ野球選手ではあるけど、そこまでレギュラーで出ているわけでもないですし、特別すごいわけでもない。でも、そんな僕でも画面越しで対面した時に、患者さんたちはものすごく喜んでくれたんですよね。人によっては嬉しすぎて言葉が出なくなってしまう人までいらっしゃって、僕自身も「こんな自分でもここまで応援してもらえているんだ」と励まされました。看護師さんから「普段はあまり元気が無かった患者さんだけど、久しぶりに笑顔を見ることができました」などの嬉しい言葉もいただいて。思い切って行動に移して本当に良かったです。

ーー応援しようと行動したことで、ご自身も力をもらえたのですね。

「こんなに応援してくれている方達がいるんだ」と体感したことで、僕自身のモチベーションも上がりましたし、もっと頑張ろうという気持ちにさせてもらいました。

ーープロ野球選手としてのモチベーションの在り方はさまざまで、応援してくださる声がいちばんの力になる方もいれば、サラリーや成績などを最重視する方もいらっしゃいます。磯村さんの場合は、応援の声がモチベーションに直結しやすいのでしょうか。

評価や成績から発生するサラリーを重視するのも当然で、そこをモチベーションにされる方は当然いらっしゃると思うので理解できますし、そんなモチベーションの上げ方があっても良いと思います。だけど僕の場合は、自分のモチベーションをそういったところにフォーカスしてしまうと、あまり良い結果に繋がらないんですよね。「人のため」というと語弊があるかもしれませんが、僕は応援の声をモチベーションにした方が自ずと力が出る。その方が結果としても良い形に繋がることが多いので、評価や数字だけにフォーカスしすぎないようにしています。



「いてくれて良かった」と思ってもらえる存在になるために



ーー病院訪問やオンラインでのイベントはシーズン中に行っているのですか?

オンラインでの交流会は、シーズン中の試合が無い日に調整していただきました。あとはオールスター休みなどの練習期間にも行いましたね。オンラインだったからこそ、シーズン中に開催できた部分もあったように思います。病院や施設への訪問については、オフシーズンに行っています。

ーーオンラインと直接訪問では、感じる印象も変わるものでしょうか。

応援してくださっている方が喜んでいる姿を目にすることで湧いてくる力はどちらであっても変わりませんが、直接伺った際には、患者さんや介護される方の大変さや、その周囲でサポートしている方々の姿を知ることができました。施設や病院で暮らす患者さんたちの実際の生活を知ったことで、患者さんたちがすごいのはもちろん、サポートしているご両親や施設の方々もすごいなと改めて感じましたね。

ーーきっと患者さんのみならず、そのご家族や施設で働く方々も、磯村さんから力を貰えたと思います。

どんなに大好きな家族であっても、毎日サポートを頑張っている中で疲れる瞬間ってどうしてもあると思うので、日々の中に少しでも嬉しいことがあれば頑張れるかなと思うんです。僕がその嬉しいことのうちのひとつになれていればいいんですけどね(笑)。

ーー活動を始める前と後で、心境の変化はありましたか?

気持ちはそんなに変わらないですね。活動を始める前から、車椅子の人を見たら助けたいとか、困っている人がいるなら力になりたいって気持ちはあったので、その延長線上に活動があるような感じです。

ーー磯村さんのお話を聞いていると何かを「してあげる」という感じがとても薄いというか。活動自体も実際の患者さんたちへの接し方にしても、「自分がやりたいこと」としてすごくフラットに行っている印象です。

特別意識しているわけでは無いのですが、弟に接するのと同じような気持ちで接した結果そんな感じになっているのかも。実際に僕と接した方々がどう感じているかはわからないですけどね。

ーープロ野球選手としての部分に、活動の影響は出ていると思いますか?

そんなには変わらないと思いますが……。あっ、でも患者さんたちを招待した日には、やっぱり少しでも試合に出て活躍したいなと思うようになりましたね。もちろん毎試合出たいとは思っているんですけど、招待した日に結果を出せたらよりラッキーかな、と。だからその日のためにまた日々の練習を頑張ろうと思えます。この活動が日々のモチベーションに繋がっている部分もありますね。

ーー磯村選手が活動を行うことで、他の選手へ活動が広まる側面もあるのでは?

他のプロ野球選手も一緒になって球団の垣根を越えて行っていければという思いもありますが、やっぱり各選手が自分のタイミングで自発的に動くのがいちばんだと思うので、あまり促すようなことはしてないんです。だけど、今後そういった選手が増えていくと嬉しいなとは思っています。

ーー先ほど「応援の声をモチベーションに」というお話がありましたが、やはりファンの声援は力になるものですか。

なります。ファンの方々の声援は本当にありがたいし、背中を押してくれますね。僕は普段あまり試合に出ていないのに、たまに出る時には皆さんものすごい歓声で迎えてくれるんです。そういう時、ファンの方々にすごく助けてもらっているなと改めて感じます。

ーーただ、時に応援に熱が入るあまりに行き過ぎた声をあげてしまう方もいらっしゃいますよね。

でもそれも仕方がないことなのかなとは思っています。野次もミスをしなければ起こらないから、もし野次を受けたとしたらそれはミスした自分が悪いんで。プロになったばかりの頃はいやだなと思ったりもしていましたが、今はそれもまたファンの声だと思って受け入れて、切り替えるようにしています。

ーーSNS上の声が気になることはないですか? 例えばエゴサーチとか。

エゴサは良いプレーができた時だけします(笑)。みなさんの喜ぶ声を見て「あぁ良かった」と思っています。逆に悪い時は見ないです。やっぱり気持ちの良いものでは無いですし、自分が悪い状態の時に入ってくる声は自分にプラスをもたらすものではないと思うので、あまり見ないようにしていますね。

ーー磯村さんは、自身の選手としての現状を今どのように捉えているのでしょうか。

試合にあまり出られないことについては、チームの状況や考えもあると思うので仕方がない。だからといって自分が必要とされていないわけではないことも理解しているので、僕が目指すべきはまず今の立場できちんと結果を残すことかなと考えています。どういった立場であっても、まずは置かれたその立場で精一杯頑張って結果を残さないことには次のステップに進めませんよね。だからチャンスを迎えた時に結果を出すため、まずは常日頃から地道に練習を頑張ることが大事だと思います。

ーー置かれた場所で日々努力することが、きっとチームの勝利にも繋がっていきますよね。

野球は団体スポーツですからね。勝負事に負けていいものは無いと僕は思っているので、どんな形・立場であれチームが勝つことがいちばんです。その中で少しでも僕も勝利に貢献できて、「あいつがいて良かったな」と思ってもらえれば良いなと思っています。



ネガティブだった自分を変えたのは良い意味での「開き直り」




ーープロ野球選手としての苦しさを感じることはありますか?

プロとしていちばん苦しいのは、結果が出ない時ですね。

ーー努力をしているのに結果がついてこないことに悩む方は多いと思うのですが、磯村さんはそういった状態が続いてしまった時、どんなことを考えていますか?

僕も昔はあまりにも結果が出ない時期が続くとすごくネガティブな気持ちになって、「来年どうなるかな」とか「もうしんどいな」みたいなことを考えてしまっていたんです。だけど最近は良い意味で開き直ることができるようになってきました。落ち込んでいろいろ考えているうちに、「自分がやるべきことをきちんとやったうえで駄目だったら、きっと後悔しないな」と思ったんです。後悔しない終わり方をしたいなら、駄目でも何でもやるしかない。後悔しないようにやって駄目なら、それはそういう世界なんだから仕方がない。そう考えられるようになってからは、あまり落ち込むこともなくなりました。

ーーそう思えるようになったのは、プロ何年目くらい?

カープが3連覇したとき(2018年から3年間)あたりだったかな……。ちょうど5、6年前からです。あの頃チームは勝っているけど僕自身はなかなか結果を出せなくて、「チームの調子が良い時なのに自分が足を引っ張っているのでは」と考えてしまって、少ししんどい時期でした。だけど、悩みつつも「せっかく今1軍にいれるんだからチャンスは必ずある」と考えているうちに、さっき話した考えに行き着いたことで、開き直って努力を続けることができるようになったんです。

ーーいざという時最大限の力を発揮できる自分であるために、自身を信用できるだけの準備をするということですね。

結局自分が納得するまで練習を重ねて、自分の中の不安要素を無くして試合に臨むしかないんです。「これだけやってきたんだからこれで駄目ならしょうがない」と思えることが大事なんだと気付きました。だからと言って駄目だった時に何も考えないわけでは無く、結果が出せなかった時はすごく反省しますし、何が駄目だったかを考えて次に活かすことを考えます。反省を活かさないと、やっぱり次の結果に繋がらないと思うので。

ーー数年前にその気づきを得られたことで今は安定したメンタルを保てていると思うのですが、もしかして元来の磯村さんは結構ネガティブだったりしますか?

もともとの性格は結構ネガティブなので、学生時代は落ち込むことも多かったです。切り替えが上手くできるようになってからは以前のように無駄に落ち込むだけといったことは無くなりましたが、なかなか切り替えられなかった時期は失敗が続いてしまうこともありました。野球って「失敗のスポーツ」とも言われているんですよね。打っても3割だから、7割は失敗。じゃあその7割をどう活かしていくかがすごく重要なんです。もし1打席目が駄目でも2打席目で、3打席目が駄目でも4打席目でサヨナラホームランを打てれば結果は残せる。だから、最初の失敗を引き摺らず、きっちり切り替えることが先に繋がっていくと思います。

ーー今お話いただいたのはバッターとしての考え方だと思うのですが、キャッチャーとしての立場だとまた考え方も少し変わりますか?

キャッチャーはまずマイナス面に目を向けて駄目だった時のことから考えていかなくちゃいけないから、結構ネガティブな人が多いんじゃないかなと思うんですよ(笑)。

やっぱり相手がいるポジションだから、良いことだけを考えていたらなかなか難しい。でも、やっぱりキャッチャーであっても「1点取られても次は抑えていこう」と切り替えることは、バッターと共通して大事なことなんじゃないでしょうか。2点しか取れなくても、攻撃で3点取ってもらうことができれば勝ちに近づくから、バッターとはちょっと方向性は違うかもしれないけど「とにかく最小失点に抑える」という戦い方もあるのかなと考えています。

ーーポジションによって戦うマインドも異なってくるんですね。ちなみに私見ですが、プロ野球選手の方ってとにかくポジティブな方が多い印象だったので、ネガティブ寄りな方もいるというのは少し意外でした。

プロ野球選手はものすごくポジティブな方とネガティブなタイプと、両極端ですよ(笑)。

ただ「自分はできる」と思って臨む方が絶対にパワーは出ると思いますし、僕から見ても一軍で活躍している選手にはそういうタイプの方が多いような気がしています。

ーープロ野球選手として活躍するには心技体すべてが必要だと言いますが、やはりメンタルがいちばん試合に影響を与えるものなのでしょうか。

どうでしょうね……。シーズン通して戦うことを考えると体力は絶対に必要なので、大前提としていちばんにくるのは体力だと思うんです。練習をするにも試合に出続けるにも、体がいちばん大切。だけどその次の段階、いざ試合に出てあとは結果を出すだけという状況になった時には、メンタルも重要ですよね。

ーーベンチやブルペンでサポートを行うこともあるかと思うのですが、そういった時に心がけていることはありますか?

ベンチにいる時は、試合に出ている人を応援したりすることをいちばんに考えています。

やっぱり試合に出ている人が結果を残さないとチームは勝てないので、その時出ている選手をサポートするのがベンチにいる者の仕事だと思っています。だから気持ちを鼓舞するじゃないですけど、盛り上げるようには心がけていますね。

ーーベンチの盛り上がりは、やはりチームの雰囲気やその先の結果にも影響を与えるものなんですね。

ベンチの空気が重いと、試合にも悪い影響を与えてしまいますからね。マイナスの雰囲気は守備や攻撃にも影響してしまうと思うので、逆に仮にあまり良くない状況だったとしても「大丈夫、抑えられるぞ」「ここから取り返せるぞ」という前向きな空気を作れれば、それは周りにも確実に伝わっていきます。

これは僕だけじゃなく、カープの選手みんなが同じ気持ちでプレーしていると思います。

ーー入団からカープ一筋の磯村さんがそう仰るということは、本当に雰囲気の良いチームなんだなと思います。

そうですね、あとは監督の考え方や雰囲気も影響しているように思います。新井さんはいろんなことをすごくポジティブに考えられる方なので、今のカープはみんな「新井さんについていこう」という雰囲気があるんですよね。試合中仮に失敗した時でも、「大丈夫、失敗は次に活かそう」と良いタイミングで声を掛けてくれる方です。ベンチの雰囲気もすごく良いし、これから打席に向かう選手ひとりひとりをよく見て声を掛けてくださるので、すごくやりやすい。みんなもポジティブな気持ちで打席に入れているんじゃないかなと思います。



応援とは「生きていく中でいちばん必要なもの」



ーー磯村さんは、少年野球時代からキャッチャーだったのですか?

少年野球の頃からずっとキャッチャーです。キャッチャーを始めた最初のきっかけは、子供の頃に体が大きかったというか、ちょっとぽっちゃりしていたからなんですけどね(笑)。

ーー他のポジションをやりたいなと思ったことは?

中学時代はプロ野球選手を見て、華のあるピッチャーやショートに憧れたこともありました。

ーーテレビ中継などで取り上げられることが多いのはピッチャーや勝利打点をあげた選手が多い印象ですね。ただ、メディアにフォーカスされることは少なくても、キャッチャーはリードやピンチの際のコントロールなど試合に大きく貢献する割合の多いポジションだと思います。

ピッチャーが注目されるのも、もちろん嬉しいんですけどね。でもメディアには取り上げられなくても、意外とチームメイト同士では「今日のキーマンはあの人だったよね」みたいなことは共通認識として解っているので、そこで評価してもらえていれば十分嬉しいです。多分他のみんなもそうなんじゃないかな。

ーーキャッチャーとしていちばん嬉しい瞬間ってどんな時ですか?

いちばんは、やっぱり完封した時ですね。0点に抑えるって結構大変ですし、なかなかできないことなので。0点に自分が抑えて完封できた時は、本当に嬉しいです。

ーーところで、よくキャッチャーがマウンドに走ってピッチャーと会話しているシーンを目にしますが、あれはどういったタイミングで行っているものなのでしょうか。

タイミングはその時々の流れで判断していますね。相手チームの流れになっている時に少し間を空けたくて時間を取ることもありますし、あとはピッチャーの表情や雰囲気を見て話に行くこともあります。直感的に「いつもと様子が違うな」と感じる時があるので、そういった時は時間を取るようにしていますね。

ーーやはりバッテリーを組む相手の様子はよく見ていらっしゃるんですね。

誰でも同じだと思いますが、やっぱり緊張していたりするとすぐ分かります。

ーーちなみに、プロ生活の長い磯村さんでも緊張することってあるんですか?

もちろんありますよ。強がったところで仕方がないので、それを受け入れてどうしていくかを考えるようにしています。ゲン担ぎをしたり緊張を取るためにルーティンを作る方もいらっしゃいますが、僕の場合はそういったものは一切無いですね。単純にそこまでこだわりが無いだけかもしれませんが(笑)。

ーー「試合中は音が聞こえない」という選手もいらっしゃいますが、磯村さんは、試合中ファンの声援は聞こえていますか?

打席に入っている時はものすごく集中しているので正直あまり聞こえていませんが、入る前まではちゃんと聞こえていますよ。自分の名前がコールされた時にワァッと会場から上がる歓声は、いつも嬉しく思っています。

ーースタジアムでは大きな応援を受けつつ、オフシーズンやお休みの日は病と闘う人やその周りの方を応援する立場でもある。今日いろいろなお話を聞いて、磯村さんは応援される人でもあり、応援する人でもあるのだなと感じました。

そんな大それた存在でもないですけどね(笑)。 でも身近なところで言うと、僕が野球を頑張ることが両親や兄弟の生きがいにもなっているようなので、それと同じように僕の頑張りが誰かの生きる活力になっていれば良いなとは思っています。

ーー最後に、磯村さんにとって応援とは何でしょうか。

生きていく中でいちばん必要なもの、かな。応援って自分が持っているパワー以上のものを生み出してくれる、背中を押してくれるもので、僕にとっては何より力になるものなんです。「応援がないと頑張れない」とは言いませんが、でも僕の場合はやっぱり応援があって何かを期待してもらえた方がパワーも出るし、「もっと頑張ろう」って思えるんですよね。例えば僕が野球選手じゃなく企業で働いていたとしても、今と同じように、誰かが応援してくれる声に対して「頑張ろう」と思っていたんじゃないかな。そう考えると、応援ってきっと誰にとっても必要なものなんだと思います。僕もプロ野球選手としてだけじゃなく、ひとりの人間として応援してもらえる人間でありたいし、僕自身も人を応援したりサポートできる人間であり続けたいなと思います。